江戸時代の前までは、『源氏物語』は変体仮名で書かれおり、読みたければ、その写本を所持している人から借りて読み、自分の物にしたければ、書写するしかありませんでした。『源氏物語』は、そのように書承されることで、数百年もの間、受け継がれてきたのです。そのために、書写する人の意識や、時代的・文化的な影響などにより、百種類を越える写本が生まれて、今日に伝わっています。
ただし、ほぼ全巻の揃った写本で、現存する最古のものは鎌倉時代のものです。国宝「源氏物語絵巻」に残る詞書は平安末の書写とされますが、断片的に過ぎず、定家が選定した青表紙本でもありません。そこで、鎌倉時代の写本である〔河内本〕を取り上げ、活字本のテキストとして唯一流布している〔青表紙本〕との本文の相違から『源氏物語』の実態について考えてみます。
講座協力:(株)みらい応援・わくわくラボ(わくラボ)