講座名を「近現代作家の狂・病と作品」として、漱石から太宰まで、7人の作家・歌人(いわゆる、文士)の病気や、アルコール・薬物による狂乱と作品との関わりについて論じてみたいと思っています。
明治以降、昭和戦前期までの文士には、メニンガーが“慢性自殺”と称したような状態で薬物やアルコールに溺れた者が多くいます。病気ということに注目すると、断然多いのが結核です。彼らの時代、結核はいわゆる”死病“でした。患者である文士は、自らの死を見つめながら生きていました。また、ある文士達は”神経衰弱“――今日でいう”ノイローゼ”に苦しみました。
そうした状況は彼らにとって確かに不幸ではあったものの、文士という立場で捉えると、そうした状況にあったが故に文学史に残るような作品を書き遺すことができた、といえる文士も少なくありません。そうした文士の狂・病の有様と、それがうみだした作品との関わりをお話できれば、と思っています。