日本の伝統芸能の粋として、世界文化遺産に登録されている能。しかし難解で鑑賞しにくいともいわれています。能を易しく能楽師が解き、身近に親しんでいただくための講座です。解説を聞くだけではなく、能楽堂を見学したり、舞台で使用される面や装束に触れることもできます。
10月期は能「鬼界島」がテーマです。絶海の孤島に一人残される俊寛僧都の悲憤を描く名作です。
扮装の能面や装束、舞・謡などを通して、能の面白さを覗いていきます。
能公演の鑑賞会にも参加しますので、楽しんでご覧いただける講座です。
鬼界島(きがいがしま):
秘密裏にすすめていた平家転覆の計画が露見し、捕縛された面々のうち、丹波少将成経・平判官康頼・俊寛僧都の三名は南海の孤島・鬼界ヶ島に流罪となった。成経・康頼の二人は島に日頃崇敬している熊野社を島に勧請し、今日も詣でていると、俊寛が水桶を持って迎えにきている。酒を持ってきたと言いながら、三人で水を酌み交わしてありし都の日々を懐かしみ、身をかこちあう。
そこへ、中宮御産のために出された赦免状を携え、都から使いが島へ到着。成経と康頼の帰還を赦す旨を伝える。赦免状に名が漏れた俊寛は驚いて何度も状を見返すが、名がついに見つからず深く悲嘆に暮れるのであった。
成経・康頼は促されて船に乗るが、そのあとを追う俊寛は船の艫綱に取りすがり、身を波に浸しても乗船が許されず、ただひとり島に残される。
日本の伝統芸能の粋として、世界文化遺産に登録されている能。しかし難解で鑑賞しにくいともいわれています。能を易しく能楽師が解き、身近に親しんでいただくための講座です。解説を聞くだけではなく、能楽堂を見学したり、舞台で使用される面や装束に触れることもできます。
1月期は能「雲林院」がテーマです。我が国の貴公子といえば在原業平。京都・紫野の桜舞い散る中、優美な舞をみせます。
扮装の能面や装束、舞・謡などを通して、能の面白さを覗いていきます。
能公演の鑑賞会にも参加しますので、楽しんでご覧いただける講座です。
雲林院(うんりんいん):
摂津国の芦屋の里に、伊勢物語を愛読している公光(きんみつ)という者がいた。不思議な霊夢をみたため、その夢の告げによって、京へ春の旅に出た。桜舞い散る紫野雲林院のあたりで桜花を眺めて、美しさのあまりに一枝折ろうとすると、老人が現れてこれを咎める。公光は「いずれ散る花であるからかまわないではないか」というと、老翁は「春風はただ花のみを散らすが、あなたは枝を折ろうとしていて風流の道に外れる」とたしなめ、その後はお互いに古歌をひきつつ春の風情を愉しむ。公光は夢の中で、業平と二条の妃が姿を見せて「紫野へ来れば秘事を伝えよう」との告げを受けたことを話すと、老人は今宵はここに夜を待つようにといい、我こそ業平の霊と名乗って夕暮れの霞の中へ消えてしまう。《中入り》
公光は所の住人に業平と雲林院の話をきいて、いよいよ業平のことを思い、花の木陰で待つことにする。伏して待つ公光の前に、在りし日の優美な姿で業平が現れる。業平は伊勢物語にさまざま語られている秘事を説き明かしながら、月の光のさす中、高雅な舞を歌い舞う。時刻はうつり、やがて夜が明けるとともに業平の姿も見えなくなり、公光の夢は覚めるのであった。